鍋の話

冬の訪れを感じ、肌寒くなってきた頃。ようやくウチの会社の自販機にも『あったか～い』飲み物が増えてきた。
でも私の視線はその横に設置されたもう１台の自販機に釘付けである。その自販機、鍋が売っていた。
秋葉原名物おでん缶を筆頭にちゃんこ鍋、しゃぶしゃぶ、キムチ鍋、水炊き、湯豆腐、もつ鍋、すき焼き、あんこう鍋、鴨鍋、ねぎま鍋、寄せ鍋、豆乳鍋…あっ！私の故郷の味、しょっつる鍋もある！
一つ１２００円と高めだけど、ちょっと買ってみようかな…
「それ、買うならお昼の方がいいわよ。量は多いし、何より今買うと冷めちゃうから」
先輩に声をかけられた。
「それとこれ、『あったか～い』と『アツいっ！』の２パターンあるから気を付けて。アツいっ！は素手で触ると火傷するから絶対に鍋掴みを用意しなきゃだめよ」
見て、と言われた先、後輩の男性が火傷した手を冷やしながら、デスクに置かれたお一人様鍋を前に途方に暮れていた。