好きでいてほしいから

「A君ってさー」
「ん？」
「ほら、あのテレビに出てるaさんに似てるよねー」
「あぁ、よく言われるよ」
「ふふ、私ね、そっくりさんが好きなんだー」
「え？」
「だからー、aさんにそっくりなA君が好きなのー」
こんな調子で俺は彼女が出来た。

「A君ってさー」
「ん？」
「最近かっこよくなったよねー」
「そ、そうかな？」
aさんのドラマ主演が決まった時、彼女はやけに俺に甘えてきた。

「A君ってさー」
「ん？」
「やっぱそんなかっこよくなかったねー」
「おい」
でもドラマが終わればこんな調子で元通りだ。

「♪ふふーん」
「ん？珍しいね、鏡の前に立つなんて」
「ふふ、お洒落してみたんだー」
「綺麗じゃん」
「なんかいきなり自分の顔が好きになっちゃってさー」
彼女はそう言って可愛らしく笑う。

点けっ放しのテレビには、彼女そっくりの芸能人が映っていた。

この人が、ずっと有名でありますように。