雪平さんの雪見鍋

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週末のスキーがパパの仕事で延期になり、僕は一人でぷりぷりしてた。
「あーあ、つまんないの。ごめんまた今度って口ばっかり。パパもママも僕より仕事が大事なんだ」
「坊ちゃんが大事だから、お仕事を頑張るんですよ」
台所のコンロで、お手伝い鍋の雪平(ゆきひら)さんがカタンとはねた。
「では私めが、坊ちゃんにスキーをご馳走しましょう」
カンコンはねた雪平さんは、取っ手で窓を開けて庭へおり、空から降る雪をキャッチし始めた。コンロに戻ると、鍋底の槌目(つちめ)で雪を転がす。

ぴょん!と雪平さんから雪ウサギが跳び出した。
「やっ!」
雪平さんの上で雪がとんぼ返りする度、雪だるまや雪像が出てきて、台所が雪まつりの会場みたいになる。
すごいすごい!僕も夢中で拍手してたけど……
「そーれっ!」
最後のシメに大ジャンプ。鍋から特大なだれが起きた。
「今晩は雪見鍋ですよ」
絶対怒られる……。僕の頭も真っ白だった。
ファンタジー
公開:21/11/15 14:06
月の音色 月の文学館 テーマ:鍋の話

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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