聞こえる

聞こえる。私の名を呼ぶ声が。誰かが私の救いを待っている。
一分一秒でも早く行って助けねば。
「それでスピード違反したの？困るよ。ヒーローがそんな事しちゃ」
「すみません」
「もう3度目だから運転免許停止ね。今度からは公共の交通機関で行ってよ」
「そんな。そこを何とか」
「駄目」
「あっ、これ少ないけど貰っておいて」
「受け取れないよ。賄賂なんて。それに見てごらん。周りの民衆を。君には非難の声が聞こえないのかい？」
「聞こえない。聞こえない。何も聞こえない。そんな事を気にしていたらヒーローなんてやっていられない」
「困っているようですね。私が助けてあげましょうか」
「誰だ、君は」
「マフィアです。民衆はあなたの崇高な理想を理解できないでしょう。ですが、私ならあなたの理想を理解できます。どうです。私と同志になりませんか」
「戯言に聞こえるな」
「戯言を現実にするかしないかはあなた次第です」