銀杏座駅

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地下鉄に乗って東京駅を過ぎれば次は銀座駅だ。
よく利用する路線なので、うとうと眠っていると、「次は『ぎんなんざ』」という車内アナウンスが入る。
寝ぼけて聞き間違えかと思ったが、到着すると、表示に『銀杏座駅 Ginnanza Sta.』とあった。
それでも銀座駅だと信じて疑わずホームに降りると、頭上から銀杏らしきものがぱらぱらと落ちてきた。辺り一面、銀杏だらけだ。他の利用者は、全く意に介さずホームを平然と歩いている。
戸惑いつつもホームから階段を駆け上がり、地下通路を見渡すと、銀杏並木になっていた。地下通路は一直線に続き、立派な銀杏並木を通り抜ける。
地下通路を過ぎると、改札にも沢山の銀杏が落ちていたが、やはり誰も気にしていない。
最寄りの階段を上がり、地上出口を振り返ってみたら、見慣れた風景に戻っていた。
ただ、おれの頭の上には幾つもの銀杏が載っていた。
一体どこを歩いてきたのだろうか。
その他
公開:21/11/14 07:04
地下鉄 東京駅 銀座駅 路線 ホーム 銀杏 階段 地下通路 銀杏並木 改札

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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