大輪の虹列車

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第二次世界大戦末期、ソビエト軍がドイツの首都ベルリンに攻め込んだ際、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫ーー七色に輝く大輪の花のような虹が現れた。
破壊されたベルリンの市街地に突如、この虹に向かって快走する列車が現れ、ソビエト軍の戦車をすり抜けていった。
列車は、ぐるぐると旋回しながら虹に沿って上昇し、空中の戦闘機をすり抜け、天高く消え去った。

時が流れ、ロシア軍がウクライナの首都キエフに攻め込んだ。再び七色に輝く大輪の花のような虹が現れた。
破壊されたキエフの市街地を、颯爽と駆け抜ける列車が現れ、ロシア軍が発射したミサイルをすり抜けた。
列車は、悠然と虹に沿って旋回しながら天空へと上昇していった。

虹は平和の象徴だ。列車は兵器の無意味さを訴えるようにすり抜けた。そして天を目指して姿を消した列車は、神々しいまでに鮮やかな光芒となって辺り一面を包み込んだ。

間もなくして戦争は終わりを告げた。
その他
公開:22/03/05 07:20
更新:22/03/05 07:21
第二次世界大戦 ソビエト ドイツ ベルリン 七色 大輪の花 ロシア ウクライナ キエフ

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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