星を殴る

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眼鏡をかけたキリンが歩くのを見たのは私が地球防衛隊の一員として草原の脚立の上で星を殴る任務に就いていたときだ。
星といっても私が殴るのは小さな隕石だからスルーしたってどうってことはないのだけど、ひとつひとつしっかりと殴り飛ばすことで地球を守っている実感がうまれた。自分の小さなこぶしが宇宙に触れているというロマンには肌が明滅するほどの興奮と喜びがあって、つまらぬ男や犬にふられた記憶を消去してくれた。
キリンは眼鏡のせいで距離感が狂い木の葉を食べられずに困惑しているようだった。私は高枝に咲く花や果実をやさしくつまむトング「ハナツマミもの+」を使ってキリンの眼鏡を外してあげた。するとキリンは心臓を抜かれたかのようなパニックをおこして私を蹴飛ばし踏んづけて踊るように石化した。それで私は死んだけど、焼き場のひとが「いつかあんたが殴った星の裂目に木蓮が咲いてたよ」って教えてくれて、あれは救われたなぁ。
公開:22/03/04 16:56
更新:22/03/04 17:09

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