聖と俗

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真っ白な空間に、色彩を持つ存在が2つ。
「お主、何故に此処へ参った?」
「何故? 貴方が私をお呼びになったのでは?」
「いや。此方にはお主を呼ばねばならぬ理由は無いが。」
沈黙の帳が舞い降りる。
「…お主、瞞されたのではあるまいか?」
僅かな憐憫が混ざった声をかけられた存在は、大きく息を吐く。
「…漸く私にお呼びがかかったと思ったのですが、早とちりでしたか。御前を失礼させて頂きます。」
「お主、自ら還れるのか?」
「ええ。一応、下界では随一の魔術師ですので。」
誇るべき所であるにも関わらず何処か憂いを含んでいることに、もう一方は違和を感じたらしい。
「お主、なかなかに煩わしき事を抱えておるな。」
「っ! 聴いて、頂けますか…?」
「まあ、偶には良かろう。暇潰しじゃ。」
そこから滔々と流れてくる愚痴、愚痴、愚痴。
神聖さに充たされた空間に相応しくは無いそれらは、暫くの間止まらなかった。
ファンタジー
公開:22/03/05 11:00

揚羽( 日本 )

物書きの端くれになりたい一般人E

空想の世界で遊ぶことが好き

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