私と死神と猫

0
2

暖かな日差しが降りそそぐ春の日。眩しさにそっと目を細める。
膝の上にはうつらうつらと舟をこぐ猫。目の前には私の命を刈り取りにやってきた死神。どうやら今日が私の命日のようだ。
…そろそろじゃないかとは思っていた。長く生きていると自分の寿命くらい分かってくる。
良い事ばかりではないけど、悪い事ばかりでもなかった。良い人生だったと胸を張って言える。
そんな走馬灯じみた思い出に浸っていると死神にため息を吐かれた。
「また今度来ます」
えっ?何で?
「今、貴方を連れていってしまえば猫が起きてしまいます。猫が膝の上に乗っている間、人間は動いてはいけないのです。その猫は、まだ貴方に逝ってほしくないようだ。私も忙しい身。仕事がありますのでまた後日、伺わせていただきます」
死神は頭を下げるとスーッと消えていく。
その様子を見ながら猫の背をそっと撫でると猫はゴロゴロと喉を鳴らし、ギュッと私の服を掴んできた。
公開:22/03/01 20:40

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容