宇宙船にのりますか

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『渡し舟にのり 宇宙船の 時代に 生きる』

百歳の誕生日に自分の人生について書かれた色紙。
玄関入って左手の壁に飾られている。
百六歳になった彼女は、今ベッドで目を閉じていた。
3月3日、ひな祭り。今日は彼女の娘の誕生日。
うっすらと目を開け宙を見ながら、「おねやん」と言った。娘のことだ。
先日、もう少し意識がはっきりしていたときは
「おとやんに、会いたい」とだだっこのように繰り返していた。

私は、色紙を右手に見ながら玄関を出た。
何気なく空を見上げると、雲の上に影のようなものが見えた。
宇宙船だ。
宇宙船が、彼女を迎えにきたようだ。

娘さんのお誕生日が終わったら、乗られますか?

渡し舟に乗ってこの地に来た彼女は、宇宙船に乗って星となる。
その他
公開:22/03/03 12:20

風薫

第二の人生の趣味探しをしています。
老後、寝たきりになってもできる趣味探しをして、超ショートショートに出会いました(笑)(泣)
 

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