僕の欲しいもの、彼女の欲しいもの

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”天国に一番近い島”と呼ばれる場所でガイドをしている僕の毎日は地獄だった。
笑顔を絶やさず、機械のように島の素晴らしさと美しさを語り騙る。
そんな時、バックパッカーを名乗る彼女と出会った。
「天国って外面だけいい人と同じで気持ち悪いね」
この島を見てそんな事を言う人は初めてだった。驚くも内心を隠し笑顔で否定する。もっと綺麗な場所へと案内する。その全てを彼女は鼻で笑った。
「君の笑顔を見ていると島の全容が分かるよ。良いものを持っているのに実に勿体ない…」
彼女は僕に手を差し伸べた。
「私と一緒に来ない?地獄を旅する事になるけど君に本物の笑顔を教えてあげるよ」
天国の名を騙る地獄から連れ出してくれるのなら喜んで、と僕は手を取った。

僕は彼女に聞いた。多くを教えてくれる彼女に僕は何を教えられるだろう?
「そうだな…では私に恋を教えてくれ」
彼女は僕の中にある最も美しいものを知りたがっていた。
青春
公開:22/03/02 20:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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