ペンギンの遊泳免許

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長かった遊泳免許講習がいよいよ終わる。今日の試験に合格したら、ヒョウタも晴れて大人のペンギンの仲間入りだ。

ペンギン同士の衝突事故が頻発し、事態を重く見た群れの長老が遊泳免許制度を導入したのが5年前のこと。

生後3ヶ月ごろから子どもたちは遊泳学校に通い、海の状態確認、運転技術、事故発生時の対応などを学ぶ。
ヒョウタの担当は鬼のような教官で、危険遊泳すると容赦なく罵声を浴びせてきた。あまりの辛さに泣きながら宿舎に戻ったこともある。

試験開始の合図でペンギンたちは一斉に海に飛び込む。決められた時間内に魚を捕らえなければならない。

仲間たちが次々とクリアしていく。ヒョウタは焦り、思わず制限速度を超えそうになるが、教官の顔を思い出して踏みとどまった。
タイムアウト10秒前。ようやく分厚い氷の影に魚を見つけ、水面に顔を出した。

「よくやった!」
そこには、初めて見る満面の笑みの教官がいた。
公開:22/02/27 16:34
更新:22/02/27 17:33
ペンギン

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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