ボンドの惑星

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幼稚園のころ。仲良しの子が親の都合で他の園に移ることとなった。
僕は唇を噛み、溢れそうな涙を必死にこらえながら、その子に黄色い容器のボンドを渡した。

僕らの惑星ボンドラの歴史は、数千年前、新婚宇宙旅行中に遭難した一組の地球人の男女が、この星に漂着したところから始まる。
無人の荒地ばかりの星を開拓するにあたり、2人は何があっても離れないように、ボンドで手をくっつけていたのだという。
真実かは分からない。古い言い伝えだ。
開発が進んだ現在のボンドラでは危険な未知の領域など無くなり、愛する人に求婚するときはボンドを渡すという慣習だけが残っている。


幼い僕もそのことは知っていた。

あれから随分と年月が流れた。
あの子にもとっくに恋人、いや子供がいてもおかしくないと思っていたのに。

彼女は、黄色い容器を手に僕の前に現れた。
「しっかりくっつけないとね。今度は、何があっても離れないように」
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公開:22/02/26 20:21
更新:22/02/27 17:35

エス氏( 青森 )

落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。

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