気持ち買取屋

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人間には喜怒哀楽いろいろあるけれど、その気持ちを買い取ってもらえるという店がある。
その名も「気持ち買取屋」。
路地裏の隠れ家的な古民家が件の店で、客のほとんどは忘れ去りたいぐらい悲しい出来事や辛い体験をし、トラウマに苦しんでいる人たちだ。
店内は馴染みやすく、落ち着きのある雰囲気だ。気持ちは、良い悪い、度合いに応じてガラス瓶に小分けされ、レトロなショーケースに収納されている。
店主は、心理カウンセラーでもあり、気持ちを具現化する装置を医療機器メーカーと共同開発し、この店を開いた。
医師からの勧めで病にかかった患者もよく来店する。
「病は気から」というとおり、不安な気持ちを買い取ってもらった患者の多くは病に立ち向かい、無事手術を乗り切って快方へと向かうという。
買い取った気持ちのガラス瓶にも用途がある。他人の痛みを感じない凶悪犯などに使われて更生に一役買い、刑務所で模範囚になっているのだ。
その他
公開:22/02/26 07:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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