風邪をひく

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 風邪をひいた。コロナかもしれない。僕は苦しくてずっと天井を眺めてる。
 天井に女性がいる。いるわけない。幻覚だ。それほどの熱だ。知らない女性が心配そうにこちらを覗き込んでる。
 なんだか優しい幻覚だ。でもまったく熱が引かない。彼女は同じ表情。だんだん疑念が浮かぶ。もしかして彼女は迷惑そうに眉をひそめてるのでは? 幻覚として僕に見られてるのが嫌なんじゃないか。
 熱が上がる。彼女が手を差し出す。多すぎる。天井から何本も手が垂れ下がってきて無理やり薬を飲ませようとする。薬は現実で飲んだ。そんなにいらない。看病のつもりなのか殺す気か?
 目を閉じる。布団をかぶる。でも幻覚の女性は瞼の裏で余計くっきり見える。右目と左目の幻覚で微妙に違う。きっと右脳と左脳に対応して異なる表情なのだ。そんな二人が僕の脳味噌を左右に引っ張りだす。手元に引き寄せ離さないため、あるいは引きちぎって遠くにぶん投げるため。
その他
公開:22/02/26 18:00
更新:22/02/26 01:54

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