真珠の指輪

海で指輪を拾った。綺麗な石だな～と思って見ていると、おばさんが指輪を取り上げた。
「これは私の真珠よ！」
どう考えても太ったおばさんの指には入らないだろうと思ったが、指輪はおばさんの指に吸い付くようにぴったりと填まる。そうなると何も言えない。
その日からおばさんは上機嫌だ。「海で真珠の指輪を拾ったの」と周りに自慢している。あと最近はいくら食べても太らないと喜んでいた。
そんなおばさんの指を見る。あれ？指輪の石ってあんなに大きかったっけ？
何気なく指輪を眺めていると、ぴしっと音を立て割れる石。中から１㎝にも満たない上半身が人間で下半身が魚の生き物が這い出てきた。
あれって人魚の卵だったんだ…きっとおばさんから養分を吸って大きくなったんだな…
おばさんは産まれたばかりの人魚に気付いていない。
おばさんの指には海で拾った１０個の指輪。
あの卵が全部孵る頃、おばさんはきっと激痩せしているだろうな…