運命の糸

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友人の別れ話を聞いていた。
「だってなんだか急に冷めちゃうのよね」
私には理解できなかった。
私の彼と私とは、まさしく運命の糸で繋がっている。私の小指から伸びるその糸は伸縮自在で、今は会社にいる彼の小指と繋がっているのだ。どうやらこの糸は私と彼にしか見えていないらしい。声が聞きたくなったら、糸電話の要領で糸で繋がった小指を耳に突っ込めば聞こえるし、彼も小指を耳に突っ込めばそのまま会話ができる。もちろん通話料は無料。
二人にしか見えないこの糸は絆の証であり、愛情の証なのだ。だから友人の「急に冷める」の意味がわからなかった。
ある日、私と彼は浜辺を散歩中、砂浜に腰を下ろした。私たちの前を美男美女カップルが通り過ぎる。私も彼も、そのカップルに釘づけになる。あの男の人、なんか素敵。
——プツン。
何かが切れた音がしたと思ったら、私と彼の間を小さなカニが横切った。
私はなんだか、急に冷めた。
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公開:22/02/25 17:00
運命

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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