9%

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 労働。労働労働。指先に、目の芯に、終わったはずの労働が、ずっと染み付いて離れない。コンビニでアルコール度数9%のやつに手を伸ばす。新しい味。全部同じ味。えぐみと、甘ったるさがバラバラに、舌を焼いて、喉を焦がして、胃に溜まって、脳を溶かす。溶かすまで流し込む。帰宅途中、電車の中、オフィスから一番近いコンビニから出た直後、場所なんか関係ない。パンプスの踵を三回合わせて唱えれば、ほら、カンザス! 目の前には輝く麦畑、どこまでも続く金色の波。遠くから不吉な音を立てて竜巻が現れ、酔っぱらい、客引き、取引先に上司、嫌なものがみんな強風で巻き上げられ連れ去られる。ひっくり返ったパトカーを見て呆然とする女性警察官に一緒に飲みましょうと缶を渡しつつ、もう片方の手で彼女の小さな帽子、小さな手、小さな銃、どれを取る? 結末はそれに合わせて分岐するけどその前に、まず千鳥足で虹を越える、虹色の吐瀉物を、慎重に。
その他
公開:22/02/25 16:06

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