月の君

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「月です。付き合ってください。」
差し出された掌に、僕は眉を顰めた。
僕の目の前にいるのは、月ではなく、ただの可愛らしい人間だ。見たところ、月とは思えない。
しかし断る理由もないのでうんと頷くと、その子は笑顔を浮かべた。
にしても、なんでお月様が僕を選んだんだい、もっと金星とか、火星とか。
尋ねると、その子は言った。
「一目惚れ、です。わたし、なんだか貴方を他人だと思えなくて」
恥じらいを隠すように、顔に手を当てながら、その子は続けた。
「わたし、貴方が好きなんです。ほかの誰よりも、貴方の近くに居たい。
それだけが、わたしの願いなんです。」
ーーそうか。
全てを理解した僕は、もう一度うん、と頷き、彼女の手を取った。
38万キロメートルの遠距離恋愛が始まる音がした。
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公開:22/02/21 23:21

中多陸( 愛媛県 )

愛媛県民です。
月に一本程度書きます。

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