花咲か爺さん

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 飼っていた犬が死んだ。割と愛情を持って接したのに、関係なく死んだ。燃やして遺灰を桜の木にかけた。花は咲かなかった。
 異変が起こったのは直後だ。俺は正直になっていた。スーパーに行くと美味しそうなパンがあったので、食べた。レジに行き、食べたと告白した。そういうことを何十回かやって、刑務所だ。
 雑居房で知り合った男とパートナーになった。詐欺師だ。意地悪な奴だが気が回る。お陰で俺は万引きする機会がなくなったし、奴は詐欺ができなくなった。
 ある日詐欺師と被災地に行った。原発の近くに詐欺師の家はあった。飼っていた犬は繋がれたまま、とうの昔に骨になっていた。俺たちは泣いた。骨を高温で焼いて、砕いて撒いた。
 遺灰を撒いた跡から生えてきたのがこの満開の桜だ。もっとも、俺たち以外にはこの木を見ることはできない。俺が嘘つきだからじゃない。俺は犬が死んだあの日以来、嘘をつけないままなんだから。
その他
公開:22/02/21 01:28
更新:22/02/21 01:36

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