在る兵士

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紛争地帯。

事切れた母親の傍らで、赤ん坊が泣き叫んでいる。

上官が並んでいる兵士達に顎で指示を出す。早く処分しろ、と。
一人の兵士が歩き出し、赤ん坊の側へ立った。無機質な表情で見下ろしながら、手に持った銃剣を構える。

大丈夫、すぐ終わる。

刃がぴかりと光った。その時。

一人の少女が、何処からともなく飛び出してきて、赤ん坊を抱き上げた。兵士を見上げ、睨み付ける。

兵士が持つ刃よりも、目映い瞳に、兵士は驚き、動けなくなった。

少女は赤ん坊を抱えたまま、風のように走り去っていった。

兵士は最早、動かなかった。

上官がゆっくりと近づいてくる音がする。手には冷たいピストルを持って。

兵士は自分の未来を察した。しかし、彼の心は深い霧が晴れたように、澄み渡っていた。

銃声が響いた。
その他
公開:22/02/22 23:45

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