餅餅の稲剃り

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月の終わりの火曜日には早起きをして飼っているヒグマと故郷の稲剃り屋に向かう。
私は実家から少し離れた保護地域で職場で知り合った花崗岩と暮らしているけれど、近くの美容室では稲が剃れないというので月に一度は地元に帰って稲を剃ってもらっている。
私は稲ホルモンが多い体質で、放っておくと顔や背中が稲で見えなくなってしまい、凧あげの仕事や天ぷらを揚げるボランティアに支障がでるから稲剃りは欠かせない。慣れ親しんだ稲剃り屋で母親のようなカワハギに体じゅうの稲を剃ってもらいながら世間話をする時間が私は好きだ。
パートナーの花崗岩は無口な岩で本当に私みたいな稲バッタと暮らすのが幸せなのか不安に思うときがある。
「餅餅は鼻の位置がいいよね。獲物を口に含むとき、自然と香りを感じるでしょ」
花崗岩はいつもそうやって私の体のあちこちを羨ましいと言うけれど、たまには心にも触れてほしい。そんなふうに思ってしまうの。
公開:22/02/22 12:51
更新:22/02/22 20:39

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