手装道路

10
6

高速道路会社の土木技術職員が住民に説明を始めた。
「今回のルートは、地形や居住区などのデータをマッピングしたデジタル地図上に、道路との相性を手相のように占って選定しました。
占い師は手相家ならぬ『道相家』というデジタル地図に内蔵された人工知能で、道路を整備する際の手がかりとなる『道線』を診て判断します。
例えば、トンネルを掘って山越えの最短ルートにするか、山を迂回するルートにするかで、道線が延々と続く場合は道路の寿命が長く、道線が太い場合は交通量が多く幹線道路になることを示しています。偶に見られるぐるぐる巻きの太い道線はジャンクションになります。いわゆる交通の要衝ですね。一方、道線が途切れている場合はルート上で事故や災害が頻発して道路が持続せず、道線が細い場合は交通量が少なく枝線道路になることを示しています。
このように整備された道路を関係者の間で舗装道路ならぬ『手装道路』と呼んでいます」
その他
公開:22/02/19 07:04
高速道路 ルート 地形 デジタル 地図 手相 トンネル 交通 ジャンクション 舗装

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容