矢島は時間を止められる
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自分だけが、矢島が時間を止めるのを知っている。昼休みの後の数学、開け放した窓からの暖かい日差しと優しい風、その時矢島は時間を止めた。
びっくりした。体が動かない。呼吸もできない。意識だけがずっとパニック状態で働いている。校庭から聞こえるかけ声は延々引き伸ばされ、先生も、時計も、風を受けたまま膨らんだカーテンも全部止まっていて、だけど前の席の矢島だけが一人だけ大きく伸びをして、机に突っ伏して本格的に昼寝をはじめた。昼寝が終わると、矢島は漫画を読んだり、好きな人の顔をずっと覗き込んだりしていた。
どれくらい時間が経ったのか、席に戻ると矢島はまた時間を動かしはじめた。授業が再開した。時間が止まったことは誰も気づいてなかった。矢島も、時間を止めたのを見られていると気づいてないみたいだった。友達でも、気になる人でも、なんでもなかった矢島が、あの時から、自分にとってはじめての特別な人になった。
びっくりした。体が動かない。呼吸もできない。意識だけがずっとパニック状態で働いている。校庭から聞こえるかけ声は延々引き伸ばされ、先生も、時計も、風を受けたまま膨らんだカーテンも全部止まっていて、だけど前の席の矢島だけが一人だけ大きく伸びをして、机に突っ伏して本格的に昼寝をはじめた。昼寝が終わると、矢島は漫画を読んだり、好きな人の顔をずっと覗き込んだりしていた。
どれくらい時間が経ったのか、席に戻ると矢島はまた時間を動かしはじめた。授業が再開した。時間が止まったことは誰も気づいてなかった。矢島も、時間を止めたのを見られていると気づいてないみたいだった。友達でも、気になる人でも、なんでもなかった矢島が、あの時から、自分にとってはじめての特別な人になった。
青春
公開:22/02/18 01:57
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