暗号作成機

向かいのマンションに住む男性から好きだと告白された。返事しなきゃ。でもどうしよう。直接言うの恥ずかしい。手紙にしよう。あ、そうだ。どうせなら暗号作成機を使おう。
私は、以前母にもらった暗号作成機を押入れから取り出した。言葉を書いた紙をこの機械でスキャンすると、その言葉を暗号化してくれる。

「これ、この前の返事。私のあなたに対する気持ちが書いてあるの」
私は暗号化した手紙を、男性に渡した。

暗号化した手紙にはこう書いてあった。
———
桜咲く
幸せ。
　この
世界は
壮大。

かつて
　見た
空港の
景色最
高だ。

ない文字を読んでね。
———

さすがに難しいだろうと思ったが、暗号好きな彼には簡単だったようだ。
「す……き……」
彼は手紙を見ながらそうつぶやき、そして顔を上げて私に微笑んだ。
「君も僕といっしょなんだね。ありがとう」

こうして付き合い始めた彼は、今では私の夫である。