いつも残される

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口の中にざらめのおかきがある。
私がおかきを噛むことなく舐め続けているのは、口に含んだタイミングで会議がはじまったからで、口を動かすことなくおかきを湿らすミッションに集中するうち、会議に参加している皆さんが笑いはじめて、その笑いは相当な熱量を帯びて広がり、中には泣いている人までいた。
次第に私はおかきを口に含んだままの自分が笑われているような不安に襲われて会議どころではなくなった。
そもそもこの会議の目的は何だろう。この人たちは誰だろう。ホワイトボードには、すあま、孤独、きなこあめ、などと記されている。部屋の四隅にはポロシャツにスカート姿のボーリング選手が丸い豆腐を手に立っていて、笑わずにいる私だけを見つめている。私はおかきを口に含んだまま、なけなしの笑顔をつくった。そのいびつさは鏡を見なくてもわかる。
突然挙手を求められて、何がが議決され、皆が去った。
私はざらめのおかきを舌でつぶした。
公開:22/02/15 12:43

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