感情を勘定に換える

母一人子一人。我が家は絵に描いたような貧しい暮らしを強いられていた。
それでも私は幸せだった。貧しくとも大好きな母と過ごせる毎日が大好きだった。
しかし母は貧乏である事に引け目を感じていた。服や玩具は当然として、筆記用具ですら買ってあげられない事を嘆いていた。給食費が払えず、後ろ指差される私を憐れんだ。
だから母は感情を売った。感情を買い取ってくれる店で私への愛情が高く売れたと言う。
その日から母は変わってしまった。義務感からか育児放棄こそされないものの、私達は親子という関係ではなくなった。
私はただ、母に養われるだけの存在になってしまった…
それが辛くて、悲しくて、私も感情を売った。
母が大好きだという感情だけを残し、変わってしまった母に対する複雑な感情を売り続けた。
その甲斐あって、私は自身で大学進学に必要な費用も捻出できた。
あとは母への愛情を売って一人暮らしを始める資金としよう。