新しい時代にふさわしい恋愛小説

ベテラン作家は、新しい時代に相応しい恋愛小説に悩んでいた。
単純な男女の恋愛は「同性愛者を排除している」「多様性を認めていない」と非難されるかもしれない。昔ながらの女性が男性を支えるストーリーなどもってのほかだ。
男性同士、女性同士なら良いかと言うと、これも結局のところ「多様性」のキーワードで非難される恐れがある。恋愛には様々な形がある。主人公をたくさん作り、それぞれにLGBTの役目を与えて……いやいや、それだけではダメだ。人種的な多様性がない。
私は頭を抱えた。完全に行き詰った。それでも新作を書かねばならない。私には妻と子供の生活を守る義務があるのだ。
そして、ついに彼は新しい時代にふさわしい恋愛小説を産み出すことに成功した。

新作を読み終えた編集長は、こうつぶやいた。
「ところで、なぜ君はアメーバが合体したり分離したりする話を書こうと思ったのかね？」