デジタルな紅茶

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新しく食品の商品を始めた、楽器・雑貨メーカーのハマヤ。
企画会議で熱弁をふるうのは、企画担当の次郎君だ。

「これが新商品の“デジタル紅茶”です」
皆の注目が集まる。彼は紅茶をカップに注いだ。
「一見、普通の紅茶ですが、一口飲めば違いが分かります」
「どんな?」
「はい、普通の紅茶は、口の中で味わいがゆっくり広がります。これは、口の中のあちこちで、おいしさが出ては消え、また出ては消えるのです」
「それじゃ、落ち着かないよ」と一同。

次郎君は言う。「いえ、そのポップな賑やかさが、楽しいんです。そして」
彼はカップの紅茶を飲み干して言った。
「飲み終わると、楽しさの余韻が後をひかず、すぐに消えます。スイッチを切るように」
「それじゃ、お茶の味わいが無いだろ?」
彼は言った。
「そんな時は、お湯で二杯目を淹れて下さい。すぐに、楽しい気分に戻れます。楽しさが、“続きから再生”できるんですよ」
ファンタジー
公開:22/02/13 18:16

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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