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キララといっしょに映画を観にいった。客席に座ると眠りに落ちて夢をみた。夢の中でさらさらと砂が流れて落ちる。ときおり映画の声が遠くから聞こえて砂が止まる。しばらくするとまた砂が流れる。そのうち何も聞こえなくなり、砂がさらさらと流れては、横に座るキララの背中に落ちる。まだキララの背中を見たことがない。もちろん素肌の背中のことだが。
映画が終わって明るくなった。気がつくと客席にはキララと二人きりだった。キララと映画館を出た。
どこかで火事があったようだ。街がざわついて消防士たちがうろうろしている。街を抜けて川原をあるいた。街のざわめきが遠い。生暖かな風を受けて立ち止まる。キララが砂州に向かって走った。キララの背中に砂がたくさんのっている。吹きとばされて砂がさらさらと散った。砂が散ったらキララの背中が見えるだろうか。キララは遠くに走っていった。
その他
公開:22/02/13 16:05

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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