箱入り娘

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僕の彼女はお嬢様で、いわゆる箱入り娘だ。
けれどおごったところは微塵もなく、社会問題や環境問題への取り組みに熱心な、素敵な人だ。少し世慣れないところも、とてもかわいい。

「あれ……?」
その日の彼女は、なんだかどこか違っていた。
いつもの上品さを失っているわけではないけれど、親しみやすいような、気安い感じがしたのだ。
「簡易包装になったの」
「え?」
「箱入りはエコじゃないもの」
エコ。そういえば、少し前に、過剰包装がどうのという記事を熱心に読んでいた気がする。
「もう箱は返上よ」

それからというもの、彼女は日毎にエコ化していった。
髪や服を結わえていたリボンはなくなり、装いはカジュアルで、シンプルになっていった。

「お待たせ」
デートの日、待ち合わせ場所にきた彼女は、小さな女の子を二人連れていた。面食らう僕に、明るく笑う。

「妹も箱入りをやめたの。今日からは、私と一緒の袋入りよ」
その他
公開:22/02/13 13:43

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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