怒りっぽい彼

タケシは怒りっぽい男だった。
喧嘩沙汰を何度だってやってきた。
そんな彼にも恋の季節が来た。
相手は同じ職場のある女性。
熱しやすくもあるタケシは、数度のデートのあとで、女性に婚約を申し出た。

「イエスと言いたいわ。……でも、簡単には結婚できない事情があるの。私、部長と肉体関係があるのよ」

いやみったらしいことで有名なあの部長か。
タケシは、「俺が話をつけてやる」と、部長の家に押しかけた。

「一体なんの用だ」
「彼女との関係をやめてもらおう」
「なんの話だ」
「とぼけるな」

話はエスカレートし、部長からは罵倒の一声。
カッとなったタケシは思わず、部長を強く殴った。
部長は頭を打ってあの世行き。
タケシも、会社を首になって刑務所行きとなった。

「乱暴者と嫌われ者がいなくなって、この職場もスッキリするわ」

タケシに言い寄られた彼女は、そうほくそ笑んだとか、ほくそ笑まなかったとか。