質問があります！

「質問があります！貴方は誰ですか？」
子どもみたく元気に、そして無邪気に問いかける女性…僕の妻だ。
妻は事故に遭い、記憶を失っていた。
「僕は貴方の夫です」
そう伝えると妻は顔を真っ赤にして「えっ…うそっ…ほんとに？」と分かりやすく狼狽する。まるで出会った頃みたいで初々しい。
幸い、妻の体には異常がなかった。記憶に関してもいつか戻るでしょうと言われ、１カ月もする頃には自宅へと帰って来た。
妻と、もう一度ここからやり直すんだ…僕は密かにそう誓う。
妻は離婚寸前だった。些細なずれが諍いとなり、喧嘩が絶えなかった。
でもそれはもう過去の事だ。僕達はここからリスタートするんだ。
そう…僕は愚かにも妻の記憶が戻るなんて考えていなかった…
事故に遭った僕を妻が見下ろす。
「これでおあいこ」
妻は全てを思い出していた。僕があの日、車道に押し出した事も…
君に質問がある。いつから僕を殺したいと思っていた？