群衆は見つめるだけ

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「レジ袋はご入用でしょうか?」
「は? 当然だろ。この量手で持って帰れると思ってんの?」

スーパーのレジで、クレーマーと思われる中年男性が店員に詰め寄っていた。
従業員が足りないせいか、レジは1つしか稼働していない。
並んでいた他の客はクレーマーを見て迷惑そうな顔をしていたが、自分の順番が回って来るのをただ待っていた。

「……失礼いたしました」
「お前態度悪いな。どんな教育してんだここは。店長呼んで来いや」

クレームは次第にエスカレートし、その間レジの列は長くなる。
クレーマーの怒りはなかなか収まらず、土下座まで要求してくる事態になった。

クレーマーは数分間粘った挙句、店長からお詫びとしてこのスーパーで使える商品券千円分を受け取り、暴言を吐きながら帰って行った。

その間レジに並んでいた群衆は、何も言わず何もせず、嫌そうな顔だけをして自分の順番が回って来るのをただ待っていた。
その他
公開:22/02/14 02:10
更新:22/02/14 11:19

泉 千緒(イズミ チオ)

私は元読書嫌いの人間です。
今まで本は学校の教科書や、就職に役立つかもしれないと思った自己啓発系の本を読むという、全然楽しくない読書でした。
小説を読む内に面白くなり、自分でも書いてみたくなりました。
よろしくお願いします。


 

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