まばゆくかぐわしく

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「やぁーつかれたねぇ。」
男はそう言って、後部座席をゆったりと使いなら、後方から照らされ輝く海面に目を細めた。
「こんなに山が夕陽で赤く染まるものなんですねぇ。」
助手席の女が前方を指差す。
「あぁこの今年は特にね。途中のぼりがあったでしょう?太陽の光をたくさん集めて育ちましたって。沢山生ってるからなぁ今年は。」
運転手の男は山を段々に植わる木を横目に言った。
「そうそう、たくさん使っちゃうんだよね、イエロー。だから夕陽がイエロー不足でマゼンダっぽい色しか残らないの。おカミも色彩設計大変なのよ。身につまされるねぇプレゼン後は特に。」
大きく頷きながら芝居がかった声。
「ははっまったくですね。」
和やかな笑い声が響く中、女は窓を開ける。
潮の匂いと、何かを燃やす薫り、そしてほんの少しの柑橘の香りがした。
公開:22/02/12 00:11

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