崩壊エキノコックス

野生のキタキツネに遭遇した。どうやら人間を恐れていないようで近づいてきた。
その姿があまりに愛らしく眼前にいるのだ、私は躊躇わず撫でてみる。どこか気持ち良さそうで、今度は抱えてみることにした。少し野生的な匂いはするも、この癒しの前ではさほど気にならない。
あぁ、なんて可愛い生き物なのだろう。

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もう、半年ぐらいだろうか。発熱を起こしてから、ずっと寝たきりだ。最初は解熱剤を飲んでいたが、まるで効果がなく、苦しみは続くばかり。
次第に腹部も膨らみ始め立つことすらも億劫になり、とてもじゃないがまともに生活を送れなくなってしまった。
親は既に他界しており、恋人すらいない。独り身であるために、誰も助けを呼べない。

寂しいからと、キツネを触ってしまった。
後に知ったことだが、キツネにはエキノコックスという寄生虫が宿っている。それは人間にも感染する。
私は自分の無知を悔いて、舌を噛んだ。