無音よりも静か

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 人がもっとも孤独になれる場所はどこだろう?
 誰もいない車の中は、その一つだ。
 それは外界から本当に閉じた空間であるからだ。
 もちろん、周りに他の車がいないなら、という条件つきではあるが。

 田中はそんな『もっとも孤独』な条件を満たす状況にいた。
 彼は山奥の車中にいた。
 車はエンストし、もう動きもしない。携帯電話も通じない。
 まさか、遊びに行った帰り道にこんな目にあうとも思ってもいなかった。
 
 田中は、ドアを閉じた。
 身を震わせながら、運転席に座り込む。
 こうなったら、なんとかこうして、助けが来るのを待つしかない。
 目をつぶった田中の耳に、雪の降り積もる、静かな音が聞こえてくる。
 完全な無音よりも静かな、不思議な音が、ゆっくりと、田中の耳に積もり続ける。
 田中の意識は、聞いたこともないような静けさの中に埋まっていった。
 深く、深く。
 ずっと、静かに。
 
 
その他
公開:22/02/12 15:41

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