迷宮に入り込めなかった犯人

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「白熊刑事!聞きましたよ」
署を出ると記者の狼が待ち伏せていた。
「もう嗅ぎつけたのか」
「どんな事件でもこの鼻にかかれば…そんな事より死後3日経つ遺体の発見と同時に犯人逮捕というのはどういう事です?」
「そのままだ」
「家族…いや害者は独り身。もしや『犯人は現場に戻る』とかいう。そこで運悪く鉢合わせたと」
白熊は睨む。「失敬。運良く鉢合わせを」
「いや、犯人は一度も戻ってきていない」
「はぁ。解決してるのにまるで迷宮入りです」
「難しく考えすぎだ。事は至ってシンプルだよ」
狼は懐から封筒を出す。
「そうそう、先週頼まれた例の狐の情報です」
「食えない奴だな」白熊は一枚の写真を出した。
犯人ですねと狼はニヤリと笑う。
「なるほど。確かに戻ってきていないな。寧ろ必死だった訳か」
白熊は封筒を胸ポケットにしまった。

「警官が立ち入った時、遺体と拳銃を持ち窓枠に手をかけたナマケモノがいたのさ」
ミステリー・推理
公開:22/02/12 14:42

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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