大きな木の下で

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「やーっと着いた!本当におっきいね!」
大きく枝葉を広げた木の下で、負けじと大きく伸びながら声をかける。
「こんなに大きかったんだなぁ。」
彼の口は、ポカンッと開いたままになっている。
「あら、あんまり表情が変わらないあなたが珍しい。」
笑いながら言うと彼は慌てて口を閉じた。
少し赤くなった顔を横目に、ついつい歌を口ずさんだ。
「このー木なんの木、気になる木ー。」
「モンキーポッド。」
「え?」
一言だけ聞こえた無表情な声に思わず聞き返す。
「だから、モンキーポッド。この木の名前。」
「よ、よく知ってるね。」
拗ねてる。
さっき揶揄ったことに対して、拗ねてる。
「って、ちょっと待って、名前知っちゃったら、この木なんの木が気にならなくなっちゃうじゃん!名前も知ってる花が咲くじゃん!」
折角の楽しみを奪われた気がして抗議の声を上げる。
そんな他愛もない穏やかな日々が、何より心地良かった。
青春
公開:22/02/28 18:00
更新:22/03/02 19:06

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

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