蒸し風呂我慢

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風呂出て着流し、夜はまだ長し。なんて、くだらないことを申しますが、江戸の世でいう風呂屋ってなぁ今でいうサウナ。入浴するのは「湯屋」と呼んで区別したそうですが、江戸の男は風呂好きで、特に蒸し風呂で汗を流し、夜遊びをするのが粋な嗜みでございます。

5人ほどの若い衆が景気良く蒸し風呂で我慢比べをしております。
「江戸っ子は辛抱だ。蒸し風呂ですぐ立つなんざ漢がすたらぁ」
「随分口がたつなぁ兄ぃ、もう限界かぃ?」
「威勢はいいが真っ赤な顔じゃ立つ瀬がねぇぞ」
「けっ、憎まれ口じゃ腹も立たねぇ」
「口が悪ぃな、角が立つ」

そんな調子で皆、意地を張った罰か、揃ってのぼせ上がって倒れちまう。


「呆れた意地っ張りだ。それで誰も立たなかったのかい?」
番頭が倒れた男たちにそう問うと、一人がバツが悪そうに窓の外を見てこう答えた。

「もう夜かい?どうやら随分、時間がたったようだね。」
公開:22/02/09 15:16
更新:22/02/09 15:18

伽藍堂 無一文( 寄席 )

伽藍堂無一文(がらんどうむいちもん)
しがない噺屋風情が芸の肥やしにこちらで厄介になっております。
兄さん、姐さんがた、どうぞお見知り置きを。

たまに拝読、感想を残しやすが、
江戸弁忘れた時ゃ内緒にしといてくだせぇ。

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