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細々と水が流れる音がしていた。
もう二十年以上も昔のこと。さびれた映画館にはほとんど客がなくて、観客席には三、四人だけ。私もまじって席に座って時間をつぶしていた。もう一時間半ほどじりじりと粗い粒子の映像が上映されつづけていた。モノクロ映像のような色の乏しい景色が繰り返す。場末のごみごみとした活気のない街。
映画のストーリーはよく覚えていないが、登場人物は当時の私と同じく時間を持て余した学生だった。名を知らない男優の学生は授業にも出ず、本も読まずだらだらとその日その日を過ごしている。起伏のないストーリー。起伏はあったのかもしれないが記憶にない。見ているうちに映画館を出たくなったけれど、何の予定もなくこのまま出て行って何をするでもない。そう思って席に沈んだままだった。 映画館はやはり暗い。投射される光のなかにちらちらと塵が浮いてみえた。「青春物語」だった。
映画のストーリーはよく覚えていないが、登場人物は当時の私と同じく時間を持て余した学生だった。名を知らない男優の学生は授業にも出ず、本も読まずだらだらとその日その日を過ごしている。起伏のないストーリー。起伏はあったのかもしれないが記憶にない。見ているうちに映画館を出たくなったけれど、何の予定もなくこのまま出て行って何をするでもない。そう思って席に沈んだままだった。 映画館はやはり暗い。投射される光のなかにちらちらと塵が浮いてみえた。「青春物語」だった。
その他
公開:22/02/10 17:10
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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