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「結婚してくれるなら、ひとつ条件があるの。将来、私の代わりに子供を産んでくれる?」

旅先のホテルのバーで意を決してプロポーズをした。その直後、彼女はピンクに染まったカクテルグラスを傾けながら予想もしなかったことを口にした。

彼女はバリキャリの経営コンサルタントとして激烈な日々を送っている。当然私より稼ぎも良く、常日頃から上から目線なのは承知している。実際、今晩も有り余る彼女のホテル上級会員ポイントの無料特典枠を利用して泊まっているので、私の立場はヒモに近いと言っても過言ではない。

「あなたに妊娠してもらいたいのよ。私はこの先MBA留学やパートナーへの昇進に挑戦したいからそんな暇ないの」
「でも、男には妊娠は無理じゃない?」
「私の子宮は取り外し可能なの。だから後であなたの身体に付け替えれば産めるはずよ。問題はその覚悟があるかどうかだけ」

カウンターには何も言えない男の姿があった。
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公開:22/02/10 08:27
更新:22/02/10 08:35

アカサカ・タカシ( Chicago )

2022年から米国シカゴ在住。

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