彼のびっくり箱

「びっくりした？」
それが彼の口癖だ。
後ろから大声、黒板消しトラップ、背中に氷色んな人に色々なイタズラを仕掛けては、
「びっくりした？」
と無邪気な笑顔で聞いてくる。
幼稚園の頃からずっとだ。
そう、ずっとそんな姿を見続けている。
ケガをさせたり、物を壊したりということがないだけ、まだマシなのだが。
そんな関係が20年以上続いているが、彼は未だに、
「びっくりした？」
と言い続けているのだ。
大人になりなよ、とは何度も言っているんだが変わらない。
今日のディナーでも、何かされるんだろうな。
警戒しながらも折角のお料理に舌鼓を打つ。
いつまでも子供だと思っていたが、なかなか良い店を知っている。
そうして帰り際、小さな箱を渡された。
やっぱりと思いながらも箱を開けると、そこにはツルリとした指輪が１つ。
「びっくりした？」
いつもの笑顔。
この笑顔がダメなのだ。
多分、一生見続けるんだろうな。