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「さしすせそサイン」の噂を聞いたのは、後輩芸人たちと呑んでいたときだ。頭文字がサ行の芸能人のサインを集めると有名になれるという、胡散臭いジンクス。だが、芸歴10年目で鳴かず飛ばずの俺は、藁にも縋る思いで実践することにした。
なんとか4人分を集め、残ったのは「す」の一文字。俺は事務所の先輩芸人、鈴木チャーリーの楽屋へ向かった。芸人を志すきっかけとなった人物である。
「他を当たんな」
取り付く島もなかった。泣いて頼んでも、土下座しても、頑として首を縦に振らない。肩を落とす俺に、チャーリーさんは言った。
「残念ながら、テメェの席奪うかもしれねぇ人間に手を貸してやるほど、俺はお人好しじゃねぇからな」
すげなく追い払われたが、そんなことは気にならなかった。俺をライバルと認めてくれていたことが嬉しかったのだ。
「待ってろ、今に引きずり落としてやるからな!」
遠ざかる背中に吠えて、俺は再び歩き始めた。
なんとか4人分を集め、残ったのは「す」の一文字。俺は事務所の先輩芸人、鈴木チャーリーの楽屋へ向かった。芸人を志すきっかけとなった人物である。
「他を当たんな」
取り付く島もなかった。泣いて頼んでも、土下座しても、頑として首を縦に振らない。肩を落とす俺に、チャーリーさんは言った。
「残念ながら、テメェの席奪うかもしれねぇ人間に手を貸してやるほど、俺はお人好しじゃねぇからな」
すげなく追い払われたが、そんなことは気にならなかった。俺をライバルと認めてくれていたことが嬉しかったのだ。
「待ってろ、今に引きずり落としてやるからな!」
遠ざかる背中に吠えて、俺は再び歩き始めた。
青春
公開:22/02/07 22:37
落語とか漫才とかが好きなので、クスッと笑えてオチが綺麗なものを書こうと頑張っています。
よろしくお願いします。
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