こっくりさん（電子版）

かつて小学生の間で流行したこっくりさんが、ネット世界に進出したという。
放課後の教室で、先生の目を盗み友達と試した。あの後ろめたくも懐かしい記憶がよみがえり、噂で聞いたサイトにアクセスしてみた。

紙に鉛筆で書いた質問表が、液晶画面と電子フォントで現れる。ご丁寧にもポインターは１０円玉。なかなか本格的だ。
１０円ポインターを中央に置き、指を乗せて呪文を唱える。
「こっくりさん、こっくりさん、おいで下さい」
音声認識で、喋った質問に応じて直接動きがあるそうだ。昭和の昔ならいざ知らず、今はＡＩ技術でどうとでもなる。分かっていても期待が膨らむ、くすぐったい様な時間こそ楽しいのだ。
ポインターが『ＹＥＳ』へ動き、さて質問を――

と意気込んだものの、いざとなると浮かばない。そもそも雰囲気を味わいたかっただけで、あえて訊きたい事もないのだ。
「……こっくりさん、こっくりさん、何を訊けばいいですか？」