むかでさん

朝、学校に行くと私の上履きがなかった。
困る私を見てくすくすと笑ういじめっ子達。でも彼女達がやったという証拠もなく、私は靴下のまま廊下に足を下ろした。
「良かったら、私の使う？」
そう声をかけてくれたのは手足が１００本もあるむかでさん。
「私なら一足分なくても困らないから」
怖いと噂される彼女だがとても優しくて驚いた。
むかでさんにお礼を言い、上履きを借りる。
いじめっ子達が何か言いたそうにしていたが、むかでさんに睨まれ口を閉じる。
むかでさんは毒舌で有名だ。噛みつかれたら顔がパンパンに腫れ上がるまで泣かされる。
昼休み、むかでさんを食事に誘った。むかでさんは凄く嬉しそうに微笑んだ。
見た目の怖さから敬遠していたけど、むかでさんも私達と変わらない女の子だ。
聞けば彼女は今、恋をしているらしい。
ゲジゲジ君に片想い中のむかでさんは、自身も益虫になれるよう自分磨きを頑張っていると話してくれた。