発火石焼き芋

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「いしや~きいも~おいも~」最近めずらしい流しの石焼き芋屋さん。
寒いし、お腹空いた。「1つください。大きいの。」
「はい。熱くなるから、気を付けて。食べどきを逃しちゃいけないよ。」
「・・・はい。」
なんとなく、おじさんの言葉に違和感を覚えたけれど、美味しそうな焼き芋のにおいと手の中の温かい感覚に、そんなざわっと感は流されていった。
家に着いて、手洗いも早々に、早速、石焼き芋にかぶりつく。あま~い。温かくて美味しい。
こころなしか買った時より熱くさえ感じる。
無心にかぶりつくも、半分を過ぎたあたりでお腹いっぱいに。
「また、明日にでもチンして食べよう。」
買った時の紙袋に半分の焼き芋を残して、私は家の雑事に取り掛かった。

明かりの消えたリビングのテーブルで、紙袋がチリチリと黒いシミをつけていく。やがて、赤い淵をまといながら。
「熱くなるから、気を付けて。食べどきを逃しちゃいけないよ。」
ミステリー・推理
公開:22/02/06 12:15

シロヒロ( 横浜 )

横浜在住のシロヒロです。
皆様の心の琴線に触れる作品を投稿できたら嬉しいです。

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