アシカ社会

アシカ社会になった。街にはアシカが往来し、カフェでアシカが談笑する。マンションにもアシカ。朝、アシカたちは家を出て駅に向かい満員電車に乗る。駅ではアシカがホーム階段を器用に昇って改札口を抜ける。
人類はもういない。経緯は不明。人類の遺産、街や交通機関や電力などをちゃっかりと利用してアシカが社会を作った。
オフィスではアシカたちが一斉に仕事を始める。昼休みにはランチに出る。ランチを済ませたアシカたちはエレベーターで屋上まで昇る。屋上にはちょっとした高さの台座がある。アシカは台座に昇って両前ヒレを広げて吠える。アオッ、アオッという声をアシカたちは聞き合っている。台座は街によく設置してある。
仕事を終えたアシカは家に帰るとペットと散歩に出る。ペットは大人しい虎。公園には台座がある。アシカが台座で吠えた後で、虎が台座に乗り、両手両足を揃えてアオッ、アオッと吠える。虎の声は夕陽の公園に寂しく響く。