オムライス

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「ごめんね……。これが最後のご飯だから……」

母はそう言って私にオムライスを作ってくれた。幼かった私は意味が分からず、オムライスを食べた。大好きな母のオムライスの味は、今でも覚えている。

母が失踪した。原因は父のDVだった。私も連れて行って欲しかったけど、母は私を置いて行ってしまった。最初は母を恨んだ。自分だけ逃げた母を。でも私は、後に母が悲惨な生活をしているのを知って、私を置いていった判断は、間違っていなかったのだと知った。父は私に暴力を振るう事はなかった。いつも殴られるのは、母だけだった。ならばこれが正しかったんじゃないか。そう思った。

大人になった私は、母の元へ行った。
母を助けようと思った。しかし母は、私の顔を見るなり謝ってきた。

「ごめんね、ごめんね」

何度も謝る母に私は言った。

「ねえ。お母さん、オムライス作って。久しぶりに」

母のオムライスは、甘い味だった。
公開:22/02/05 09:37

富本アキユ( 日本 )

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・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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