独楽犬

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むかしむかし、ある村の神社に一匹の野良犬が住みつきました。
独りでいることを楽しんでいる隠遁者のような野良犬は、コマのようにくるくる回ることが好きだったので、村の人たちから親しまれ「独楽犬」と呼ばれるようになりました。
ある深夜、神社に魑魅魍魎がやってきました。魑魅魍魎は、村を鎮護する神社を乗っ取って我がものにしようと企んでいたのです。
神社の境内で眠っていた独楽犬は、異変に気付くと臆することなく魑魅魍魎に向かって飛びかかりました。
明け方、神社の境内には噛み殺された魑魅魍魎の死骸があり、その傍らで独楽犬が石像になっていました。
魑魅魍魎と相討ちになった独楽犬が石像にされてしまったのだろうと憐れんだ村の人たちは、独楽犬の石像を神社の狛犬として崇め奉ったということです。
今も、一対のはずの狛犬が一体しかいない珍しい神社として有名です。そして時おり独楽犬が回っているような気配がするそうです。
その他
公開:22/02/05 07:26
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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